不動産を売りたいけど、何から始めればいいんだろうとお悩みのあなたへ
不動産の売却は、多くの方にとって一生に一度あるかないかの大きな取引。数百万円、場合によっては数千万円という金額が動くのに、学校で教わるわけでもなく、周囲に経験者がいないことも珍しくありません。
「事前に基礎知識を持っているかどうかで、売却の結果は大きく変わる」
——これは多くの売却経験者が口を揃えて言うことです。
まずは不動産売却の基礎知識として知っておきたい不動産売却の流れや売却方法の違いなどを解説しますので、ぜひ最後までお読みください。
目次
不動産売却は、大きく7つのステップで進みます。全体の流れを先に頭に入れておくだけで、「今自分はどの段階にいて、次に何をすればいいのか」が見えるようになり、漠然とした不安がかなり軽減されます。
その理由は、不動産売却に対する不安の多くが「先が見えないこと」から生まれているからです。逆に言えば、全体像さえ把握すれば、各ステップでやるべきことに集中できるようになります。
以下が、不動産売却の基本的な7ステップです。
まずは自分の不動産がいくらくらいで売れそうか、おおまかな相場を把握します。国土交通省の「土地総合情報システム」や不動産流通機構の「レインズマーケットインフォメーション」を使えば、過去の成約事例を無料で調べることができます。
複数の不動産会社に査定を依頼し、自分の不動産の適正価格を見極めます。1社だけでなく、3社程度に依頼して比較することが重要です。
信頼できる不動産会社を選び、売却活動を正式に依頼する「媒介契約」を締結します。
不動産会社がポータルサイトへの掲載やチラシ配布などの販売活動を行います。この間、売主は内覧対応の準備を進めます。
購入希望者が実際に物件を見に来ます。第一印象が成約を左右する重要な場面です。
条件がまとまったら、売買契約を締結します。この時点で手付金(売買価格の5〜10%が目安)を受け取ります。
残代金を受け取り、所有権移転登記を行い、鍵を引き渡して完了です。
全体の期間はおおむね3〜6ヶ月が目安です。ただし、物件の種類やエリア、市場状況によって大きく変わることもあります。マンションは比較的早く売れる傾向がありますが、郊外の一戸建てや土地の場合は6ヶ月以上かかることも珍しくありません。
このように、全体の流れを7つのステップとして整理すると、不動産売却は決して「得体の知れない難しいもの」ではないことがわかります。一つひとつのステップを順番に進めていけば、初めての方でも着実にゴールにたどり着けるのです。
不動産の売却方法には「仲介」と「買取」の2種類があり、どちらを選ぶかで売却価格も期間も大きく変わります。
「仲介」とは、不動産会社に買主を探してもらう方法です。不動産会社はあくまで「仲介役」として売主と買主をつなぐ立場で、成約時に仲介手数料が発生します。市場価格に近い金額で売れる可能性が高い反面、買主が見つかるまでに時間がかかることがあります。
一方「買取」は、不動産会社自身が直接あなたの物件を買い取る方法です。買主を探す必要がないため、早ければ数週間で売却が完了します。仲介手数料もかかりません。ただし、買取価格は一般的に市場相場の7〜8割程度になります。不動産会社はその物件をリフォームして再販売する(または別の活用をする)ことで利益を得るため、その分が差し引かれるのです。
売却価格:仲介=相場に近い価格 / 買取=相場の7〜8割程度
売却期間:仲介=3〜6ヶ月が目安 / 買取=数週間〜1ヶ月
仲介手数料:仲介=あり(売買価格×3.3%+6.6万円+税) / 買取=なし
内覧対応:仲介=必要 / 買取=不要
向いている人:仲介=時間に余裕があり、高く売りたい人 / 買取=早く確実に売りたい人
結論として、「時間に余裕があり、少しでも高く売りたい」なら仲介、「期限が決まっていて確実に売りたい」なら買取がおすすめです。また、最初は仲介で売り出し、一定期間売れなければ買取に切り替える「買取保証」というサービスを提供している会社もありますので、選択肢として覚えておくとよいでしょう。
売却活動を始める前に、3つの準備をしておくことで、その後のプロセスが格段にスムーズになります。
不動産売却は準備段階で8割が決まると言っても過言ではありません。準備不足のまま走り出すと、途中で「あの書類がない」「ローン残債の計算が合わない」と慌てることになり、時間もお金も余計にかかってしまいます。
まず最優先で確認すべきは、住宅ローンの残債額です。売却価格が残債を上回れば(これを「アンダーローン」と言います)、売却代金でローンを完済できるので問題ありません。しかし、売却価格が残債を下回る場合(「オーバーローン」)は、差額を自己資金で補填するか、住み替えローン(新しいローンに残債を上乗せする方法)などの対策が必要になります。
残債額は、金融機関から届く「返済予定表」や「残高証明書」で確認できます。手元にない場合は、金融機関に問い合わせれば教えてもらえます。
不動産売却にはさまざまな書類が必要です。特に「登記済証(権利証)」または「登記識別情報」は、紛失すると再発行ができないため、早めに確認しておきましょう。見つからない場合は、司法書士による本人確認手続きで代替できますが、別途費用がかかります。
その他にも、固定資産税納税通知書、購入時の売買契約書、建物の図面・仕様書などが必要になります。詳しくは本記事後半の「必要書類一覧」で解説しますが、この段階で手元にあるか確認しておくことが大切です。
不動産会社に査定を依頼する前に、自分でもおおよその相場を調べておくことを強くおすすめします。相場を知らないまま査定を受けると、提示された金額が高いのか安いのか判断できず、不動産会社の言いなりになってしまうリスクがあるからです。
相場調査には以下の無料ツールが便利です。
レインズマーケットインフォメーション(http://www.contract.reins.or.jp/):実際の成約価格が検索可能
土地総合情報システム(https://www.land.mlit.go.jp/webland/):国土交通省が運営、実取引データを公開
大手不動産ポータルサイト:現在売り出し中の類似物件の価格をチェック
この3つの準備を事前に済ませておくだけで、不動産会社との交渉を対等な立場で進められるようになります。
査定には「机上査定」と「訪問査定」の2種類があり、目的に応じて使い分けることがポイントです。
なぜ使い分けが必要かというと、それぞれ精度と所要時間が異なるからです。
机上査定(簡易査定)は、物件の所在地・面積・築年数などのデータと、周辺の取引事例をもとに算出する方法です。実際に物件を見ることなく、1〜2日で結果が出ます。「まだ売るか迷っている」「とりあえず相場感を知りたい」という段階に適しています。
訪問査定(詳細査定)は、不動産会社の担当者が実際に物件を訪問し、建物の状態、日当たり、周辺環境、リフォームの有無などを確認したうえで価格を算出します。結果が出るまで1〜2週間かかりますが、より正確な価格がわかります。「売ることを決めた」「具体的な販売計画を立てたい」という段階に適しています。
おすすめの進め方は、まず一括査定サイトで3〜5社に机上査定を依頼し、その中から対応の良かった2〜3社に絞って訪問査定を受けるという流れです。
なお、会社によって査定額に数百万円単位の差が出ることもあります。高すぎる査定額を出す会社は「まず契約を取りたい」という思惑がある可能性がありますし、低すぎる査定額は単にその会社の販売力不足かもしれません。査定は必ず複数社に依頼し、金額だけでなく「なぜその価格なのか」の根拠を比較する——これは不動産売却における鉄則です。
査定価格は、主に7つの要素によって決まります。これを知っておくことで、査定結果に一喜一憂せず、冷静に判断できるようになります。
ここで重要な注意点があります。査定価格=売却価格ではないということです。査定価格はあくまで「この金額で売れる可能性が高い」という不動産会社の見込み額であり、実際の売却価格は市場の反応によって上下します。中には、契約を取りたいがために意図的に高い査定額を提示する会社もあるため、極端に高い査定額には注意が必要です。
売り出し価格は「高すぎず、安すぎず」の絶妙なラインを狙うことが、早期かつ好条件での売却につながります。
その理由は、高すぎる価格で売り出すと、そもそも購入希望者の検索条件に引っかからず、内覧すら入入らないからです。ポータルサイトでの掲載が長期化すると「売れ残り物件」というイメージがつき、ますます売れにくくなる悪循環に陥ります。かといって安すぎる価格では、当然ながら損をします。
不動産業界では「最初の3ヶ月が勝負」とよく言われます。売り出し直後が最も注目度が高く、購入希望者の目に留まりやすい時期だからです。この「旬」を逃さないためにも、適正な売り出し価格の設定は極めて重要です。
売り出し価格を決める際のコツは、査定価格を基準にしつつ、少しだけ余裕を持たせることです。たとえば、査定価格が3,000万円であれば、3,100万〜3,200万円程度で売り出し、交渉の余地を残しておくという戦略です。ただし、あまりに大きく上乗せすると逆効果になるため、不動産会社の担当者と相談しながら決めましょう。
内覧は、購入希望者が「この家を買うかどうか」を決める最大の判断ポイントです。第一印象が良ければ成約率は格段に上がりますし、逆に悪ければ、どんなに条件が良くても見送られてしまいます。
これは家を選ぶ心理を考えれば当然のことです。購入希望者は内覧の瞬間、「自分がここで暮らすイメージ」を頭の中で描いています。そのイメージがポジティブに膨らむかどうかは、物件の清潔感や雰囲気に大きく左右されます。
内覧前に確認すべきポイントをチェックリストにまとめました。
ペットやタバコの臭いは、換気だけでは不十分な場合も。必要に応じて消臭施工を検討
内覧前の換気は最低30分以上
特に水回りと玄関は購入希望者が注目するポイントです。予算が許せば5万円程度のプロのハウスクリーニングを依頼するのも効果的で、成約率の向上につながります。内覧対応は手間に感じるかもしれませんが、ここでの努力が売却価格と売却期間に直結します。「自分が買主だったら、どんな家に住みたいか」という視点で準備を進めてみてください。
売買契約は、不動産売却において法的な拘束力が発生する最も重要な場面です。ここでの確認不足が、後々のトラブルに直結するため、細部まで慎重に確認しましょう。
売買契約書は不動産会社が作成しますが、署名・捺印をするのは売主であるあなた自身です。つまり、内容の最終責任は売主にあります。「プロが作ったから大丈夫だろう」と確認を怠ると、思わぬ落とし穴にはまることがあります。
特に注意すべきポイントは以下の3つです。
2020年の民法改正により、従来の「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に変わりました。これは、引き渡した物件が契約内容に適合していなかった場合、売主が修補や損害賠償などの責任を負うというものです。
個人間の取引では、契約不適合責任の期間を「引渡しから3ヶ月」と設定するのが一般的です。ただし、この期間は契約で自由に決められるため、不動産会社の担当者とよく相談して適切な期間を設定しましょう。築年数が古い物件の場合、「契約不適合責任を免除する」という特約をつけることも可能ですが、その分、売却価格が下がる傾向にあります。
売買契約の際、買主から「手付金」を受け取ります。手付金の相場は売買価格の5〜10%です。3,000万円の物件であれば150万〜300万円が目安です。
手付金には「解約手付」としての性質があり、買主は手付金を放棄すれば、売主は手付金の倍額を返還すれば、それぞれ契約を解除できます。ただし、相手方が契約の履行に着手した後は、手付解除はできなくなります。
「ローン特約(買主の住宅ローン審査が通らなかった場合に白紙解約できる条項)」や「買い替え特約(買主の自宅売却が成立しなかった場合の解約条項)」など、特約の内容は必ず確認してください。特に売主にとって不利な条件が含まれていないか、一つひとつチェックすることが重要です。
決済・引渡しは、売買契約から約1〜2ヶ月後に行われ、ここで不動産売却が正式に完了します。
決済当日は、通常、買主が住宅ローンを借りる金融機関に関係者全員が集まり、以下の手順で進みます。
司法書士が売主・買主双方の本人確認を行い、必要書類がすべて揃っているかを確認します。
買主から残代金が売主の口座に振り込まれます。着金確認ができたら、次のステップに進みます。
固定資産税や管理費(マンションの場合)などを、引渡し日を基準に日割りで精算します。
司法書士が法務局に所有権移転登記を申請します。住宅ローンが残っている場合は、同時に抵当権の抹消登記も行います。
すべての鍵(玄関・勝手口・物置・ポストなど)を買主に引き渡し、売却完了です。
決済当日に必要な持ち物は、実印、印鑑証明書、登記済証(権利証)または登記識別情報、本人確認書類、振込先口座の情報などです。忘れ物があると手続きが進められなくなるため、前日までにしっかり準備しておきましょう。
2026年4月から、住所や氏名に変更があった場合の登記申請が義務化されます。不動産の売却を予定している方は、自分の登記情報が最新の状態になっているか、必ず確認してください。
具体的には、不動産の所有権登記名義人は、住所または氏名に変更があった日から2年以内に変更登記を申請することが義務づけられます。正当な理由なくこの義務を怠った場合、5万円以下の過料が科される可能性があります。
売却への影響として最も注意すべきは、登記簿上の住所と現住所が異なる場合、売却手続きがスムーズに進まない可能性があるということです。特に、転勤などで引越しを繰り返している方や、結婚・離婚で氏名が変わった方は要注意です。売却活動を始める前に、法務局で登記簿を確認し、必要であれば住所変更登記を済ませておきましょう。
2025年4月以降に着工する新築住宅には省エネ基準への適合が義務化されており、中古住宅市場にもその影響が広がっています。新築では省エネ性能が標準装備となるため、中古住宅を検討する買主も「断熱性能」や「エネルギー効率」を以前より重視するようになっています。省エネ性能が低い物件は、将来的にリフォームコストがかかるとみなされ、価格交渉で不利になる可能性があります。
もしあなたの物件が築年数の古い住宅で、断熱リフォームなどを行っていない場合は、その点を正直に開示したうえで、価格設定に反映させるのが良いでしょう。逆に、過去にリフォームや断熱改修を行っている場合は、積極的にアピールすることで差別化につながります。
「今売るべきか、もう少し待つべきか」は、多くの売主が悩むポイントですが、結論から言えば「売ると決めたら早めに動く」のが基本です。不動産市場の将来を正確に予測することは、プロでも困難だからです。
最も避けたいのは、「もう少し待てば……」と判断を先延ばしにし続けることです。不動産は「時間が経てば経つほど価値が下がる」(特に建物部分)という性質があるため、売却を決めたら早めにアクションを起こすことが、結果的に最善の判断になるケースが多いのです。
まずは複数の不動産会社に問い合わせをしてみて、査定をしてもらうところから始めましょう。その際に、担当者との相性やどれくらい真剣に向き合ってもらえるかも見極めておくと良いですよ。